これは、フランス人をパートナーに持つ女性の間で必ず盛り上がる話題です。
そうなんです、彼らは本当に彼らのママンが大好きなのです。日本では大の大人の男性がママに毎日電話したり、メールしたり、ってあまり聞かない。もしかしたら、ママが好き度は同じくらいなのかもしれないけど、きっと照れ臭かったり、大の大人が!という気持ちが先行してあまりマメに連絡をとったりしない人が多い印象ですが、フランス人男性にはそんな”恥じらい”や遠慮はありません。結婚していて、子供がいても、平気で”ママンのタルトタタンが食べたい”、とか、”ママンが遊びに来たら、手料理作ってあげなきゃ!”とか、もうおおはしゃぎなのです。そしてママンが遊びに来ると、必ずいつも以上に上機嫌。そんな彼を横目で見ながら、心の中では”またやってるよ、このマザコン!”って思っちゃったりしているわけですが、そんなことを毎回口に出していては、場の雰囲気が壊れるし、妬いてるみたいに思われるのも悔しいので、ここはひとつ、我慢!と自分に言い聞かせ、無理やりニコニコしてみたりするわけです。
今となっては、もうそんな仏人夫に慣れてきましたが、慣れるまではそれが原因で喧嘩になったこともしばしば。彼女としては、そして妻としては、そんなに自分のママンのことを話されたり自慢されたりするのって嬉しいことではないのです。おろらく女のジェラシーとやらがあるのだと思うのだけど、彼らにとってはそんなこともお構いなしに、ママンのことをよくほめます。
最近はもう諦めて、”家族を大切にできる素敵な男性”、と思うように心がけています。そしてきっと自分の息子たちもパパに似て将来そうなるに違いない!と都合よく信じてみたりしています。夫にはマザコンになって欲しくないけど、自分の息子にはマザコンになって欲しい世にも勝手なママンなのであります。
さて、始めに戻って、フレンチボーイズがマザコンである、とは仏人パートナーを持つ誰もが口にし、時には不平を、そして夫婦間に不和をもたらす原因となることすらあるらしいのですが、何だか腑に落ちないのです。日本の母たちは、一生懸命子育てに専念し、とにかく子供が生まれてからは子供中心の人生に完全に切り換わり、身を殺してでも子供を優先することが一般的なのに対して、フランスでは子供が生まれても、3ヶ月後には職場復帰するのが普通だし、子供がいたって女としての人生を謳歌しているのです。子供は人生の一部で、中心ではなく、大人中心の生活にむしろ子供は振り回されながら大人になっていくというイメージが強いです。
それなのに、それなのに、フレンチボーイズはママンが大好き、なのです。うらやましいくらい、ママンを大切にするのです。時に切なくなるくらい。つくす女よりも振り回す女の方がモテる、という構造と同じなのだろうか。いつかこの摂理を解明したいけれど、今のところやはり不可解なままです。
フランスではママンが忙しくてずっとは一緒にいられない貴重な存在だから、かえって大切にされるのか。日本では甘えの構造があり、母は自分のために何でもやってくれる人、という風になってしまい、そばにいて当たり前だから、好き、大切にすべき存在という気持ちすら忘れてしまうのか。それとも、単に愛情表現が苦手なだけなのか。
どちらにしろ、母としてやっぱり自分の息子たちにはある程度はマザコンになってもらいたいものです。なので、どうやって息子をマザコンに育て上げているのか、仏人女性たちの子育てテクニックを注意深く観察すると同時に、ママン大好きな夫をポジティブに受け止めていこうと改めて心に誓ったのであります(笑)。