うちのお兄ちん(8歳)は、食べ物に関してとても好き嫌いが激しい。
お兄ちんが嫌いなものを除けて食事をする姿にプチんと来たママン、
”お兄ちん、ちゃんと全部きれいに食べなさい!”と注意。
それに対してお兄ちん、
"mum, people like different things. we have to respect that."
と。
ん〜、なるほど。何ともブリティッシュな発言。
でも実はこれ、とてもイギリスを反映していて、とても深い発言だと思ったのだ。
食べ物に関してあれこれと好き嫌いをするのは良くない。作った人に対して失礼だし、健康面を考えてもこれは別途しつけをすべきだと認識している。
けれども、人それぞれ違った色があって、それぞれの嗜好、あり方、信仰、思考を尊重する、というのはとてもイギリス的発想、というかイギリス人が非常に大切にすることでもあるのです。
息子よ、たった3年間でもう君はれっきとしたイギリス人となってしまったか?!
でも、実はママンはそんなイギリス的考え方にはとても共感するし、とても好きなのです❤️
人はそれぞれの色があって、それぞれ違うのが当たり前。どんな色であれ、他人がとやかく批判することではない。もちろん他人に迷惑をおよぼすようなことはしてはいけない。けれども、それぞれの色・形をそれぞれの人が受け入れ、尊重する、ということを子供のうちから教育するというのはとてもよいことだと思うのです。
これに関して、少し話を膨らませ、政治的な観点から考察すると、イギリスとフランスの考え方はだいぶ異なる。
イギリスは上記のように、それぞれのあり方にとてもオープンであるため、様々なオリジン(人種)の人々が基本的にはそれぞれ尊重し合って、うまく共存している(少なくとも、そのように見える)。
街には普通にブルカ(イスラム女性の目だけを出した黒いマント(衣装))を着ている人、ユダヤ教の小さな帽子をかぶっている人、スカーフで頭を覆っている人、アフリカの民族衣装のような服装の人等、とにかく色々な人がいる。学校や会社でも、イスラム女性で頭にスカーフを巻いている人が普通にいる。
ところがお隣の国フランスでは、”ライシテ” (政教分離)という政策をとっているため、公の場で(学校など)、宗教のシンボルを顕示するものを身につけることは禁止されている。なので、宗教学校でない普通の公立の学校に、頭にスカーフを巻いて通ったりすることはできない。思い起こしてみると、会社でもスカーフを巻いている人は見た事がないと記憶している。最近も、イスラム女性がプールで着用する全身が隠れるスーツなようなものを不快だ!と批判され、物議を醸していたようだ。
というように、同じ欧州でも(まだ正式にはイギリスも欧州の一員!)、人々のあり方や国の態勢が全く違うのです。正直、イギリスがフランスに比べて比較的平和な雰囲気であると感じるのは、こういった”受け入れ”態勢、そして”個性の尊重”があるからなんじゃないかと密かに思っている。
おそらく宗教心の強い人からすると、それを無理やり禁じられる、というのは非常に受け入れ難いことなんじゃないかと思うのです。しかも服装というのは生活の一部だし、ある意味自分の一部になると思うし、要はアイデンティティー。それを拒否されるというのは、返って憎しみのような感情を生みかねない気がする。
まあ、とはいえ、正直、ブルカを来た女性を見ると、”この人たちは本当にこれで幸せなのだろうか”と、もしかしたら要らん心配をしてしまったりもする。これは完全に偏見かもしれないけど、確かに側から見るとちょっとばかり怖くも見える。
結局は何が良くて何が良くないか、と単純に決められる問題ではない。けれども、この"people like different things"は、実はとても深い言葉であると同時に、とてもイギリス文化を反映した言葉であり、"keep calm and carry on"とともに、イギリスで学んだ人生の教訓として、心に留めておこうと思うのでありました。