パリは、世界中から訪れる人々の心を魅了する特別な”何か”を持つ街です。
芸術作品が散りばめられたような街並み、洗練された食文化、スタイリッシュなファッション、ロマンチックに響くフランス語、と様々な面において五感を刺激する官能的な街です。訪れた人々はその街の放つ特別な空気に酔いしれてしまうわけです。私もそんな一人。
そんなパリの街で、結果として8年間生活することになりました。
パリの雰囲気に酔っているいるうちは、どんなネガティブなことを発見しても、”まあこれもパリの醍醐味!”とか、わけのわからない、恋は盲目的な発想ですべてを許せてしまうのです。ところが長く生活をし出すとそういうわけにもいかず、様々な”え、これってどうなの?”と思えてしまう場面に遭遇し、しまいには苛立ちに変わってしまったりするわけです。そしていつの日かお別れ?!って何だか情熱的に恋する二人みたいです(笑)。
私がパリに到着した当初、何をしても楽しいウキウキだった私に、1年ほど前からパリに来ていた同時の友人(今となってし親友!)からは、”半年もしたら私みたいにパリが大っ嫌いになるから!”と言われていました。半年たっても私はまだウキウキのままでしたが、その数年後から、徐々にこれはいや!!と思えてしまう事柄が目についてくるようになり、しまいにはちょいと距離を置きたいなあと思えてくるようになったのでした。
そうなんです。私とパリの関係は情熱的な恋人同士みたいなのです。Love & Hateの関係です。大好きなんだけど、時にはとても憎い存在でもあるのです。いやな部分はあげればきりがないくらい出てきたりするのです。
それに比べると2年前から暮らしているロンドンは、期待していなかった分、住めば住むほど心地よさが増し、よいところが色々と見えて来て少しずつ愛情が芽生えて来たといった風です。ただの同僚に次第に心惹かれていき、しまいには好きになってしまった、みたいなどちらかというと結婚相手にしたい関係なのです。
でも、不思議なことに、そんなパリだけど、それでもパリは愛おしい存在なのです。様々な欠点はあっても、そこには母性愛のような無条件な愛があるわけです。私がロンドンに対して抱く、こうだから好き、といった条件付父性的な愛ではないのです。パリはパリだから好きなのです。ある意味とてもアンフェアな気がするけど、やっぱりパリはパリであることが大事なのです。あなたへの愛に条件はないのです。
そんなパリ。どうかまた、キラキラ光ったエッフェル塔のように、またキラキラと人々の心を照らし、魅惑し続けて欲しい、と心から願います。