環境を選ぶーその⑥ロンドンから念願の日本へ

前回からの続きです。

そんな風にしてカラフルで楽し気なロンドン生活にも慣れ、気がつけば約3年の月日が流れていた。

あまりに心地良かったので、もう少しロンドン滞在が伸びてもいいよね、いや、伸ばしちゃおうか?!という甘い誘惑に惑わされそうになることも無きにしも非ず、とは言え、長期的な我らのビジョンを達成するには、そろそろ真剣に具体的な道を探し始めねば!と若干の焦りを感じ始めた私たち。

そうこうしているうちに、ブレグジットの国民投票が行われ、まさかの“leave"!

周知のことだけど、EUから抜けることを過半数のイギリス人が選択をしたのだった。

そんなこともあり、イギリス人ではない私たち、特に欧州人である夫にとっては風当りが一気に悪くなって来たように感じたようだ。

これまでは隣国同士、love & hate relationshipでそれなりに“仲良く”やって来ていた仏と英の間柄が一転、欧州人は肩身の狭い思いをするようになり、夫の周りでもこれを機にイギリスから出ていく欧州人がボチボチと出始めたのだった。

また、欧州人以外に対する移民対策も益々厳しくなったのか、驚くべきことに、これまでビザの申請・更新で問題なかった我らナニー(フィリピン人)さんの滞在許可証の更新が却下されたのだった。

ナニーさんは、最終的にはイギリスに残れることになったものの、この時点で私たちの中では、先行き不安なイギリスから“leave”というのがかなり現実味を帯び、とにかく早々とフランスに戻るなり日本へ挑戦するなりしないと!と、特に、夫のお尻に火がついたのだった。

今思えば、まるで何かの力に私たちが引っ張られていたかのように感じる不思議な出来事。

ナニーさんのビザ問題がなければ、もしかしたらずるずるとロンドンに居残り、今だにそこで生活をしていた可能性もゼロではない、と時々思ったりもする。

それだったらそれで良かったのかもしれない。それなりに幸せに暮らしていたのだとは思う。

けれども、やはり私にとっては、そして子供たち、きっと夫にとっても日本での生活というのはなくてはならない体験であったと実感している。

これも運命なのか。

まさに、ナニーさんのビザ更新却下事件が起きたタイミングが、“今がチャンス!日本へ行く絶好のチャンスだから探しなさい!”、という神様からのお告げだったのかもしれない、とも思う。

それからというもの、夫が日本にいる知り合いに連絡をし、その彼がまた知り合いに連絡をしてくれ、仕事の空きポジションの話をもらい、すんなりと面接の機会を得、まさかの日本滞在が決まったのだった。

この一連の動きは驚くほどスピーディーな展開であった。

採用が決まった報告の電話を夫からもらった時は、信じられない!

信じられないけど、天にまで上ってしまいそうなほど嬉しく、“ヤッター!!!”と叫びまくってしまいたい衝動を抑えるのに必死だったことを覚えている。

そんな風にして、夢にまで見ていた家族としての日本滞在が決まったのだった。

しかも、良くも悪くも駐在ではなく、現地採用というかたち。

ということは、期間限定ではないし、会社様に面倒を見てもらうわけではないので、その分自由であるということ!

何という展開。

一時は、夫の職業柄(建設業界のエンジニア)、外国人である夫が日本で仕事を見つけるのは無理かもしれないと感じていた。

建設業界ほどドメスティックな業界は他にないと思えるほど、超ディープな昭和文化がはびこっているイメージだ。

なので、日本移住を実現するなら、私が仕事を見つけて夫に付いてきてもらうというオプションの方が現実味があるかもしれない、と思うこともあった。

とは言え、子供たちがまだ小さかった当時の私には、日本語のできない、男である夫が“主夫”的な役回りをすることは正直あまりピンと来なく、一方で、少しの間、“主婦”として子供たちとゆったりした時間を過ごせたらありがたいな💛なんて理想を描いていたりもしていた。

夫の仕事が決まったということは、日本移住が叶うばかりか、つかの間の主婦生活も享受できるではないか!と更に興奮と喜びが冷め止まぬ状態であったのだった。

さて、こうして始まった家族として、初めての日本生活。

前にも書いことがあるけれど、私の中では、“戦いは終わった”感があり、やっと地に足のついた生活、きちんと根を張った生活ができることへの安堵感と期待、そして12年以上離れていた母国に戻ったという“浦島太郎”的な不安感に包まれながら、新たなページがめくられたのだった。

あれから約5年。

時々、欧州の街並みや雰囲気、より自由を感じるライフスタイルが恋しくなったりもするものの、やはり今の生活が、家族全員にとって(夫はどうかわからないけど)、一番バランスがとれていて、一番穏やかでいられているような気がしている。

「環境を選ぶ」のテーマで書き始めて、気が付けば6編にもなってしまった。

こうして改めて振り返ってみると、自分がワクワクする方を選んで来たつもりでいたけれど、良く良く考えてみると、“このままではまずい!自分がハッピーではいられなくなる!"、“この環境では私が私ではいられなくなる”、という強い危機感的な直感により導かれて来た部分も大きかったように思う。

共通して言えるのは、“直感”、非常に強く感じる“直感”がこれまで私の人生を導いてくれているということ。

そして、直感はおそらく常に私たちを一番正しい道、一番自分が自分らしくいられる道、自分が一番幸せを感じる道に導いてくれている、と改めて感じたのだった。

こうして直感にリードしてもらって自分の環境を選ぶ。

これがもしかしたら幸福感/充足感への一番の近道なのかもしれない。

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